哺乳類科学
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短報
アナグマ(Meles anakuma)とタヌキ(Nyctereutes procyonoides)が利用する巣穴付近における行動の違いと時間的ニッチ分化
島田 将喜落合 可奈子
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2016 年 56 巻 2 号 p. 159-165

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抄録

タヌキ(Nyctereutes procyonoides)はアナグマ(Meles anakuma)の掘った巣穴を利用することがある.ニッチの多く重なる2種が同所的に生息する場合,いずれかの種が何らかの方法で巣穴付近の利用タイミング(時期かつまたは時間帯)をずらすことで種間の直接競合を避けると予想される.山梨県上野原市大野御春山においてアナグマとタヌキが利用することがわかっている巣穴付近に赤外線センサーカメラを設置し,2014年6月下旬から12月中旬までの非繁殖期や非冬眠期の6か月間,2種の行動観察をおこなった.カメラごと種ごとの撮影日時を記録し,巣穴付近での行動を5つのカテゴリーに区分し,1秒単位の連続記録をおこなった.アナグマとタヌキは時期,時間帯をずらして同一の巣穴を利用することによって,両種が時間的ニッチ分化を実現していることが示唆された.タヌキはアナグマに比べて巣穴付近での探索行動の持続時間が長く,その割合も多かった.アナグマは巣穴内をより頻繁に利用することが示唆された.タヌキは嗅覚を用いた探索行動をおこなうことで,アナグマとの出会いを回避しつつ巣穴を共有しているものと考えられる.

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© 2016 日本哺乳類学会
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