哺乳類科学
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富山県東部の黒部峡谷鉄道沿いの冬期歩道内に確認されたニホンカモシカの糞塊
柏木 健司山崎 裕治髙田 隼人
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2021 年 61 巻 2 号 p. 249-260

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抄録

富山県東部黒部峡谷の黒部峡谷鉄道(約20.1 km;宇奈月駅-欅平駅)沿いに並走する冬期歩道(幅1 m強,高さ1.8–2.1 m前後の人工トンネル)内の糞塊について,それらの分布と形状を記載するとともに,5糞塊中の糞粒のDNA分析を実施した.その結果,糞塊の排泄種はニホンカモシカCapricornis crispusであることを確認した.カモシカの糞塊は,黒部峡谷鉄道沿いのうち柳橋駅-仏石間の約1 kmの区間で,冬期歩道の両側に点在していた.糞塊の多くは10–30 cm程度の広がりを持ち,少なくとも100–200個の紡錘形の糞粒で構成され,それぞれの糞粒は密着していた.カモシカは2019年晩春から晩秋にかけて,冬期歩道内にその出入口から50–370 mの地点まで入りこみ,少なくとも冬期歩道内を100–740 mを移動した.冬期歩道は人工洞窟に区分される地下空間であるものの,完全な暗黒の空間を伴わないため,カモシカは冬期歩道に入りこみ長距離を移動できた.なお,現時点でカモシカが冬期歩道に入りこんだ理由は不明である.

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© 2021 日本哺乳類学会
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