2015 年 34 巻 4 号 p. 86-101
本稿では,イクメンという言葉と意味が普及し消費される過程と,その言説に向き合う現在の父親のアイデンティティ構築について考察する。これまでの研究では,具体的な消費行動とアイデンティティ構築の関係に焦点が当てられることが多く,特定の父親像を担う言説とアイデンティティ構築の関係についてはあまり考察されてこなかった。そこで本稿では,マクロな視点から,主に新聞記事にもとづきながら家族サービスとの対比によってイクメンという言葉と意味の普及を明らかにするとともに,ミクロな視点から,これから親になる夫婦へのヒアリングにもとづきながらイクメンという言葉が2つの意味で捉えられ,父親のアイデンティティ構築に関わっている可能性を示す。