2017 年 37 巻 1 号 p. 42-59
本論ではホライゾン・スキャニング法を援用した未来洞察ワークショップを用いて,AIやIoTの普及に関して,2025年ごろに発生が懸念される想定外事象に関する仮説を検証した。その結果,AIやIoTの普及に関しても,2025年から2030年ごろに,現段階の国を挙げての開発ビジョンでは想定されていない「モザイク型」普及,すなわち技術導入の進捗度が相分離する状況が想定されると結論された。AIやIoTの開発に実際に携わる特に技術系の研究者はこのような「モザイク型」普及に対する「備え」を持つことが重要である。AIやIoTは人を排除し,人の知的作業を代替してしまうものというよりも,人と共存し人の知的作業を縁の下の力持ち的に補助するもの,という人間中心的ビジョンを明確化することで,より現実的な近未来のマーケティングが想定できるだろう。幅広いマーケティング実務者にとって,AIやIoTのインパクトをもっと身近に理解できるようになる一助になると思われる。