アニメ等のコンテンツに登場するキャラクターを象ったフィギュアは,世界中のファンたちを魅了している。そんなフィギュアを生産するメーカーとして,国内有数のシェアを誇り,業界をリードしているのが,株式会社グッドスマイルカンパニーである。フィギュアの生産には,熟練工による手作業が必要不可欠であるため,フィギュアメーカーは,その生産工程の多くを,人件費の安い海外の委託工場に外注している。しかしながら,グッドスマイルカンパニーは,2014年,鳥取県倉吉市に楽月工場を建設し,全メーカーに先駆けて,一部の製品を,国内自社工場で生産することにした。このように,生産活動の内製と外注を同時に行う戦略は,デュアル・ソーシング戦略と呼ばれる。本論は,この戦略を採用することによって,同社が,フィギュアの品質向上・費用低下を実現するだけではなく,生産技術の立ち遅れを取り戻した上で,生産効率化の余地を探究し,取引条件に関する詳細な交渉を行うことにも成功しているということを示す。