2021 年 40 巻 3 号 p. 31-44
クラウドソーシングを利用した製品開発によって,高い市場性をもつ製品が生み出されることが実証されている一方,収集した多量のユーザー創出アイデアを評価し,有望なものを選ぶことは大きな負担になっている。本研究では,自然言語処理を用いることによって,ユーザー創出アイデアの評価の機械化を行った。創造性研究に立脚して,クラウドから集めたアイデア全体から概念空間を構成し,そこでの出現頻度の少なさから意見の希少性を算出することで,独創性を機械的に測定する手法を構築した。レシピ投稿のデータに対して手法を適用したところ,機械的に測定された独創性は,レシピの有望性の説明に有効性を持つことが示された。本研究で構築した手法によって,アイデア評価が機械化されたのみならず,従来顧みられなかった大多数の不採用アイデアに,概念空間を構成する材料という新たな役割と,研究対象としての位置づけが与えられた。