マーケティングジャーナル
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特集論文 / 招待査読論文
レビュー有用性の影響要因
― 質的・量的レビュー ―
斉藤 嘉一
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2021 年 40 巻 4 号 p. 33-43

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Abstract

Amazon.comやTripAdvisorなど多くのクチコミサイトには,helpfulボタン(役に立ったボタン)が設置されており,読者はhelpfulボタンを押すことでレビューが役に立ったことを表明することができる。レビュー有用性,すなわち,レビューが獲得するhelpfulの数,あるいは割合がどんなレビュー特性,発信者特性,製品特性によって影響されるかは,マーケティンングと消費者行動,および情報システムの両方の領域において盛んに検討されてきた。本研究は,レビュー有用性の影響要因について,ナラティブレビュー(質的なレビュー)とメタ分析(量的なレビュー)を行った。その結果,テキストの長さと投稿者の写真の開示は,レビュー有用性とプラスの関係にあることが示された。一方,評価得点(星の数),および投稿者の名前や住所の開示と,レビュー有用性との関係については,既存研究において得られた実証結果は一貫したものではなかった。これらの一貫しない結果を整合的に説明するために,受信者のhelpful意思決定を検討することを提案した。

Translated Abstract

Many review sites, such as Amazon.com and TripAdvisor, have a “helpful” button that allows people to cast their votes on the helpfulness of a review. Marketing, consumer behavior, and information systems scholars have extensively examined review, reviewer, and product characteristics that affect review helpfulness, i.e., the number or ratio of helpful votes that a review received. This article provides a narrative review (qualitative review) and a meta-analysis (quantitative review) of the literature on factors affecting review helpfulness. The results show that text length and disclosure of reviewers’ profile photos are positively associated with review helpfulness. In contrast, prior studies had mixed results on the effects of review ratings (number of stars) and disclosure of reviewers’ names and addresses. This study suggests that examining readers’ decision-making about helpful voting can resolve these mixed results.

I. はじめに

これまでのクチコミ研究は,発信者と受信者の二者間の相互作用を想定し,どんな発信者のどんなクチコミが受信者の購買行動にどのような影響を及ぼすかを検討してきた。一方,ソーシャルメディア上の消費者相互作用は,三者間の相互作用と言える。Amazon.com,TripAdvisor,Yelpといったクチコミサイトでは,レビューのすぐ下にhelpfulボタン(役に立ったボタン)やこれに類似したボタンが設置されており,受信者(読者)はボタンを押すことでレビューが役に立ったことを表明することができる。あるレビューを閲覧した読者がhelpfulボタンを押す(以下,helpfulする)と,これがhelpfulカウンターに反映され,他の読者たちに知らされる(サイトによっては誰がhelpfulしたかもわかる)。こうして,レビュー自体だけでなく,先にレビューを閲覧した受信者が付与したhelpfulもまた,以降の受信者たちの購買行動に影響を及ぼすことになる。このように,クチコミサイトでは,helpfulボタンを介して,発信者,先行する受信者,後に続く受信者が相互作用している。

本研究は,レビュー有用性(review helpfulness),すなわち,レビューが受信者たちから獲得するhelpfulの数,あるいは割合に焦点をあてる。レビュー有用性はマーケティングや消費者行動だけでなく,情報システムの領域でも注目を集めてきた領域横断的な研究テーマである。これまでに,クチコミサイトにおいて収集されたデータを用いて,レビュー有用性の影響要因を検討した実証研究が盛んに行われてきた。本研究の目的は,主として伝統的なナラティブレビュー(質的レビュー)を,またメタ分析(量的レビュー)も併せて行うことにより,レビュー有用性の影響要因について,これまでに何が明らかにされ,何が明らかにされていないかを示すこと,そして,レビュー有用性研究はこれから何をすべきかを提案することである。本研究の主な貢献は,レビュー有用性の影響要因についての一貫しない実証結果を見つけ,これを整合的に説明するための視点を提供することである。

以下ではまず,レビュー有用性がどのような結果を生み出すかを議論することで,レビュー有用性研究の実務的意義を浮かび上がらせる。その上で,レビュー有用性がどんな要因によって影響されるかを検討した既存研究をレビューする。最後に,レビュー有用性研究に残された課題と,これに対するアプローチについて議論する。

II. レビュー有用性の結果

1. 製品・サービスの売上げに対するレビューの効果を調整する

消費者はしばしば,クチコミサイトにおいて情報探索を行い,そこで閲覧したレビューを購買意思決定に反映させる。そのため,ある製品・サービスについてのレビューの評価得点(星の数)の平均や分散は,その製品・サービスの売上げを左右する(例えば,Chevalier & Mayzlin, 2006; Liu, 2006。メタ分析はRosario, Sotgiu, De Valck, & Bijmolt, 2016; You, Vadakkepatt, & Joshi, 2015)。図1では,製品・サービスの売上げに対するレビューの影響を細い実線矢印で示している。

図1

レビューの効果を調整するhelpful

細い矢印はレビューの影響を表す。レビューとhelpfulをつなぐ二重線はレビューにhelpfulが付与されていることを表す。太い矢印はhelpfulの調整効果を表す。つまり,レビューに付与されたhelpfulは,製品・サービスの売上げに対するレビューの効果と,クチコミサイトへのアクセスに対するレビューの効果を,それぞれ調整する。

製品・サービスの売上げに対するレビューの評価得点の影響は,当該レビューに付与されたhelpfulによって調整される(図1の太い実線矢印)。Dhanasobhon, Chen, and Smith(2007)は,多くのhelpfulを獲得したレビューの評価得点の方が,そうでないレビューの評価得点よりも,売上げを高める効果が大きいという実証結果を報告している。

なぜhelpfulは売上げに対するレビューの評価得点の影響を調整するのだろうか。考えられる理由の一つは,helpfulが情報的影響を持つためである。膨大なレビューが集積されたクチコミサイトにおいて,消費者が購買意思決定の役に立つレビューを見つけ出すことは容易ではない。レビューが獲得したhelpfulの数は,そのレビューがこれまでに何人の他者の意思決定の役に立ったかを示しており,自らの意思決定にどの程度役立ちそうか,つまり,レビューの診断性を示唆する。そのため,消費者は多くのhelpfulが付与されたレビューを閲覧しやすい。もう一つの理由は,helpfulの規範的影響である。評価得点の高いレビューが多くのhelpfulを獲得したとき,レビュー対象の製品・サービスは多くの人々によって支持されていることが示唆される。そのため,多くのhelpfulを獲得したレビューは,以降の受信者たちにとって社会規範として機能しうる。このように,helpfulはレビューの閲覧可能性を高め,レビューと同じ意見を持つ人数を暗に示すことにより,レビューの評価得点が売上げに及ぼす影響を増大させる。

したがって,製造業者やサービス供給業者にとって,自社製品・サービスについてのポジティブなレビューが多くのhelpfulを獲得することは重要である。レビュー有用性研究はどんな発信者のどんなレビューが多くのhelpfulを獲得するかを特定することで,このような製造業者やサービス供給業者が持つ実務上の課題に貢献しうる。

2. クチコミサイトへのアクセスに対するレビューの効果を調整する

消費者は一般的に,少数のレビューよりも多数のレビューが集積されているクチコミサイトを,情報源として選好する。つまり,図1に細い点線矢印で示したように,クチコミサイトに集積されたレビューの量は,消費者のサイト選択に影響を及ぼす(ただし,レビュー量の効果は逓減する)。ここで,レビューに付与されたhelpfulは,クチコミサイトへのアクセスに対するレビューの量の影響を調整する(図1の太い点線矢印)。レビューには,受信者の購買意思決定の役に立つ,すなわち,診断性の高いレビューもあれば,診断性の低いレビューもある。先に述べたように,先行する読者たちによるhelpfulはレビューの診断性のシグナルとして機能する。したがって,消費者は,集積されているレビューの量が同じなら,より多くのhelpfulがレビューに付与されているクチコミサイトを選好する。

クチコミサイトが多くのアクセスを稼ぐために,発信者に対する経済的・社会的インセンティブの提供,またレビュー執筆ガイドラインの作成と公開といった手段を用いて,多数のhelpfulを獲得するレビューを数多く集める必要がある。しかしながら,どんなレビューを投稿してもらえば多くのhelpfulを獲得できるかは明らかではない。レビュー有用性の影響要因を明らかにすることは,どんなレビューにどんなインセンティブを与えるか,どんなレビューの投稿を推奨するかといったクチコミサイトの実務的課題に貢献する。

III. レビュー有用性の原因

最初のレビュー有用性研究であるSen and Lerman(2007)以降,クチコミサイトにおいて収集されたデータを用いて,レビュー有用性の影響要因が盛んに検討されてきた。ここでは,伝統的なナラティブレビューを通じて,レビュー有用性の影響要因について,これまでに何が明らかにされ,何が明らかにされていないかを特定していく。具体的には,マーケティングと消費者行動の主要誌(Journal of Marketing Research, Journal of Consumer Psychology, Journal of Retailing, Journal of Interactive Marketing, Journal of Business Research),および情報システムの主要誌(MIS Quarterly, Journal of Computer-Mediated Communication, Information Systems Research, Decision Support Systems, Computers in Human Behavior, IEEE Transactions on Knowledge and Data Engineering)に掲載された論文で報告された実証結果を整理する。これに併せて,各要因がレビュー有用性に影響を及ぼすメカニズムを議論する。

既存研究において検討されてきたレビュー有用性の影響要因は,レビュー特性(例えば,テキストの長さ,評価得点,テキストに内在する感情),発信者特性(例えば,発信者プロファイルの開示),製品特性の3つに大別することができる。レビュー特性と製品特性の効果は,何をどのように書くかというメッセージの効果,発信者特性の効果は情報源効果にあたる。以下では,これらの特性ごとに既存研究を紐解いていこう。

1. レビュー特性

既存研究では,レビュー特性の影響に最大の関心が集まった。その中でも,多くの研究で繰り返し取り上げられてきたレビュー特性は,テキストの長さと評価得点である。

(1) テキストの長さ

1は,すべてを網羅したものではないが,マーケティングと消費者行動,情報システムの主要誌に掲載された,2次データを用いた実証研究の結果である。表中の[+]は係数がプラスで有意であることを,[−]はマイナスで有意であることを,また[n.s.]は非有意であることを,それぞれ表す。表1の二列目には,テキストの長さとレビュー有用性との関連性について,各研究の実証結果がまとめられている。これによると,13の論文でテキストの長さの影響が検討され,12論文で長いテキストほど多くのhelpfulを獲得するという結果を得ている(Weathers, Swain, and Grover(2015)の結果のみ非有意)。テキストの長さのプラスの影響は,製品特性によって調整されることを示した研究もある。探索財の方が経験財よりも(Mudambi & Schuff, 2010; Siering, Muntermann, & Rajagopalan, 2018),また実用的製品の方が経験財よりも(Pan & Zhang, 2011),テキストの長さのプラスの影響は大きい。

表1

2次データを用いた実証研究

「論文」の列の著者名と発行年の立体はマーケティングと消費者行動領域の雑誌に掲載された論文,斜体は情報システム領域の雑誌に掲載された論文。「論文」の列のa:Amazon.com,b:Yahoo Movies,c:CNETD,d:Yelp,e:Yahoo Shopping,f:TripAdvisor,g:Apple’s App Store,h:Google Play。「テキストの長さ」「評価得点」「他の主要な説明変数」の列の記述のうち,≫の右側は調整効果に関する結果,→の右側は原因,帰結,示唆などについてのコメント。「他の主要な説明変数」の列に含まれる記述のうち,下線なしはレビュー特性,一重下線は発信者特性,二重下線は製品特性についての結果。

* 概念とは,意味の最小単位であり,複数の単語から成ることも多い。

長いレビューほど多くのhelpfulを得るという結果は,消費者情報処理の観点から整合的に説明される。一般的に,長いレビューは診断性が高い,つまり,購買意思決定を左右する情報を多く含むが,その一方で,これを処理するために必要な認知的努力は大きい。消費者は購買前探索のためにクチコミサイトにアクセスすることが多い。具体的には,当該カテゴリーに含まれる製品・サービスについて詳しくない消費者が(低い製品知識),よい製品・サービスを選択したいときに(高い購買関与),クチコミサイトにアクセスする。クチコミサイトにアクセスした消費者は購買関与が一定以上に高いため,診断性の高いレビューを選好し,また情報探索に一定以上に大きな認知的努力を投入することを許容する。そのため,長いレビューにhelpfulしやすい。

(2) 評価得点(星の数)

評価得点の影響に関する実証結果は,必ずしも一貫していない。表1の三列目に示したように,評価得点の線形の影響を検討した7論文のうち,6論文(Huang, Chen, Yen, & Tran, 2015; Pan & Zhang, 2011; Quaschning, Pandelaere, & Vermeir, 2015; Sen & Lerman, 2007; Willemsen, Neijens, Bronner, & De Ridder, 2011; Yin, Bond, & Zhang, 2017)はプラスの有意な影響を,Zhou and Guo(2017)はマイナスの有意な影響を,それぞれ報告している。評価得点の効果は実際には非線形であるのに,線形の効果を仮定したモデルを用いたために,結果が一貫しないのかもしれない。いくつかの既存研究では,評価得点の非線形の効果を検討しているが,そこでも一貫した結果は得られていない。4論文(Cao, Duan, & Gan, 2011; Forman, Ghose, & Wiesenfeld, 2008; Ghose & Ipeirotis, 2011; Yin, Bond, & Zhang, 2014)はU字型,2論文(Siering et al., 2018; Weathers et al., 2015)は逆U字型の評価得点の影響を報告している。またMudambi and Schuff(2010)では,評価得点の影響は非有意であった。

評価得点の影響に関する結果が一貫していないのは,製品特性の調整効果のためかもしれない。評価得点の影響は製品特性によって調整されることを報告している研究もある。Zhang, Craciun, and Shin(2010)によると,予防焦点製品では評価得点はレビュー有用性を低下させ,促進焦点製品では,逆に評価得点はレビュー有用性を高めるという。また実用的製品の方が快楽的製品よりも(Sen & Lerman, 2007),経験財の方が実用的製品よりも(Pan & Zhang, 2011),評価得点のプラスの影響は大きい。

(3) テキストに内在する感情(感情価,覚醒度,心配や怒り)

1の右端の列は,テキストの長さと評価得点以外の影響要因について述べている。このうち,下線が引かれていない部分がレビュー特性についての結果である。そのうちの一部は,LIWC(Linguistic Inquiry & Word Count)などのテキスト分析技法を用いてテキストにどのような感情が内在しているかを測定し,レビュー有用性との関連性を検討したものである。テキストに内在する感情価(ポジティブ感情か,ネガティブ感情か)とレビュー有用性の関係については,一貫した結果が得られていない。Yin et al.(2017)によると,テキストに内在する感情価はレビュー有用性に対してプラスの影響を及ぼす。一方,Willemsen et al.(2011)は,探索財ではプラス,経験財ではマイナスの影響を報告している。

テキスト分析技法を用いることで,感情価だけでなく,覚醒度(強い感情か,弱い感情か)や,心配や怒りといった特定の感情も容易に測定できる。Yin et al.(2017)は,覚醒度とレビュー有用性は逆U字型の関係にあること,また製品の実用的価値が高いほど,覚醒度の影響のカーブは急になることを示した。Yin et al.(2014)では,怒りとレビュー有用性との関連性は非有意であったが,心配と有用性の間にはプラスの有意な関連性が見られた。

(4) 論点

レビューは,製品・サービスに対する感情価だけでなく,これをサポートする具体的な論点を含むことが多い。Willemsen et al.(2011)によると,多くの論点が含まれるレビューほど多くのhelpfulを獲得するという。レビューには,二面的なレビュー,つまり,ポジティブな論点とネガティブな論点の両方を含むものがある。このような二面的レビューについては,一貫しない結果が報告されている。Willemsen et al.(2011)の結果では,二面的なレビューは有用性が高い。一方,Weathers et al.(2015)は,レビュー有用性と二面的な論点を含むことのプラスの関連性は,経験財では見られるが,探索材では見られないことを報告している。Schlosser(2011)もまた,星の数が4のとき,二面的な論点は有用性を高めるが,星の数が5のとき,二面的な論点の有意な影響はないという。消費者は有用性を評価する際,評価得点と論点の整合性を考慮しているためと考えられる(星の数が5にもかかわらず,ネガティブな論点が含まれるレビューは整合的でない)。

(5) 他のレビュー特性

既存研究では,これら以外にも様々なレビュー特性の影響が検討されてきた。レビュー有用性に対するプラスの影響が報告されている要因は,品質に関する単語の割合(Siering et al., 2018),短所についての単語数(Cao et al., 2011),使用状況の記述(Weathers et al., 2015),対象製品・サービスの写真(Zhou & Guo, 2017),読みやすさ(Ghose & Ipeirotis, 2011)である。また,経験財については,他ブランドとの比較もレビュー有用性にプラスの影響を及ぼす(Weathers et al., 2015)。評価得点が4か5のレビューについては,消費当日に書くことでレビュー有用性が高まる(Chen & Lurie, 2013)。逆に,マイナスの影響が報告されている要因は,不確実性を表す単語の割合(Siering et al., 2018),主観的な文の割合,スペルミス(いずれもGhose & Ipeirotis, 2011)である。

2. 発信者特性

既存研究では,情報源効果,つまり,どのような発信者特性がレビュー有用性に影響を及ぼすかも検討してきた。既存研究で扱われてきた主な発信者特性は,写真,および名前や住所といった発信者プロファイルの開示と,発信者の熟達性である。発信者特性に関連する結果は,表1の右端列に一重下線で示してある。

(1) 発信者の写真の開示

クチコミサイトによっては,自分の写真,名前,住所などのプロファイルを開示することができて,実際にこれらを開示しているユーザーも少なくない。発信者写真の開示がレビュー有用性に及ぼす影響を検討した3つの論文のすべてにおいて,プラスの影響が報告されている(Chen & Lurie, 2013; Karimi & Wang, 2017; Zhou & Guo, 2017)。

発信者が自らの写真を開示することで多くのhelpfulを得るという結果は,説得的コミュニケーション研究の知見と整合的である。レビュー有用性に対する発信者写真の開示の影響は,発信者の信用性や魅力度によって媒介される。つまり,クチコミサイトにおいて自分の写真を開示することで信用性や魅力度が高まり,その結果,この発信者が投稿したレビューはより多くのhelpfulを獲得する。また前述のように,クチコミサイトにおいて購買前探索を行う消費者は,購買関与は高いものの,製品知識は低い。レビュー自体を精緻化する能力が低い受信者は,発信者の信用性や魅力度の影響を受けやすい。

(2) 発信者の名前や住所の開示

発信者が名前や住所を開示することの影響については,これを支持する結果と棄却する結果の両方が報告されている。Forman et al.(2008)によると,名前や住所の開示はレビュー有用性にプラスの影響,特に,評価得点が3のとき大きなプラスの影響があるという。Ghose and Ipeirotis(2011)の結果もまた,製品カテゴリーによるばらつきはあるものの,おおむねこれを支持している。一方,Willemsen et al.(2011)は有意な影響がないことを,さらには,Siering et al.(2018)はマイナスの影響があることを報告している。

(3) 熟達性

熟達者によるレビューは診断性が高く,多くのhelpfulを集めるはずである。既存研究では,発信者が熟達者であると自ら主張することの影響を検討してきた。Weathers et al.(2015)によると,自分の経験や他者の経験に基づいて熟達者であることを主張したレビューは多くのhelpfulを獲得するが,経験の裏付けなしに熟達者を主張することはレビュー有用性にマイナスの影響を及ぼすという。またChua and Banerjee(2016)は,熟達性の主張は,探索財ではレビュー有用性を高めるが,経験財では有意な影響がないことを示している。

(4) 他の発信者特性

これらの要因以外の発信者特性の影響として,クチコミサイト上のともだちを持つことのプラスの影響がある(Chen & Lurie, 2013; Zhou & Guo, 2017)。またPan and Zhang(2011)によると,革新的すぎる発信者,またまったく革新的でない発信者が投稿したレビューよりも,中程度に革新的な発信者によるレビューの方が有用性は高いという。

3. 製品特性

既存研究では,製品特性は調整的役割を果たすだけでなく,レビュー有用性を直接的に左右することも示されている。表1の右端の列では,製品特性に関する結果を二重下線で示している。例えば,経験財についてのレビューは探索財のレビューよりも有用性が高い(Siering et al., 2018)。また,快楽的製品よりも実用的製品のレビューの方が(Sen & Lerman, 2007),経験財よりも実用的製品のレビューの方が(Pan & Zhang, 2011),促進焦点製品よりも予防焦点製品のレビューの方が(Zhang et al., 2010),無料よりも有料の製品のレビューの方が(Cao et al., 2011),それぞれ多くのhelpfulを獲得する。

4. メタ分析

ここでは,ナラティブレビューの結果を補完することをねらいとして,相関係数を効果量としたメタ分析を行う。ナラティブレビューが質的な統合であるのに対して,メタ分析は量的な方法で既存の実証研究の結果を統合する(例えば,Borenstein, Hedges, Higgins, & Rothstein, 2009; Lipsey & Wilson, 2001)。なお,レビュー有用性の影響要因に関するメタ分析を行った既存研究として,Hong, Xu, Wang, and Fan(2017)がある。本研究のメタ分析は,2017年以降に出版された論文を考慮しており,また主要誌の論文に限定している点でHong et al.(2017)と異なる。

メタ分析を行うにあたり,表1に含まれる論文から,レビュー有用性と影響要因との相関係数を収集した。具体的には,論文に相関係数が掲載されている場合はこれを使用し,そうでない場合には,単回帰分析の決定係数,t値(Rosenthal, 1991),また標準化回帰係数(Peterson & Brown, 2005)から相関係数を算出した。異なるデータを用いた複数の実証研究から構成され,研究ごとに相関係数を掲載している論文もある。この場合には,1つの論文から複数の相関係数を集めた。テキストの長さ,評価得点,発信者の写真の開示,投稿者の名前や住所の開示については3つ以上の研究から相関係数が得られたことから,これらの要因についてメタ分析を行った。マーケティング領域におけるメタ分析のレビュー論文であるGrewal, Puccinelli, and Monroe(2018)によると,ランダム効果モデルを用いたメタ分析を行う際,適切な数の効果量を集めることが求められるが,最低限必要な効果量の数についての確立されたルールはないという。ここでは,マーケティング領域でのメタ分析として多くの既存研究で参照されてきたKirca, Jayachandran, and Bearden(2005)にならい,3つ以上の相関係数が得られた要因を取り上げた。

メタ分析は効果量,この場合は相関係数の統合と言えるが,相関係数そのものを統合するのではなく,フィッシャーのz変換を施した相関係数を統合し,最後にこれを逆変換して,統合された相関係数を求めるのが一般的である(例えば,Lipsey & Wilson, 2001)。本研究でも,相関係数rに対してフィッシャーのz変換,すなわち,z=0.5×ln[(1+r)⁄(1−r)]を施し,z相関係数を求めた。このz相関係数にランダム効果モデルをあてはめた。固定効果モデルでは,すべての研究は共通の真の効果量μを持つことを仮定する(したがって,研究間での効果量の変動は標本誤差eiによるものと考える)のに対して,ランダム効果モデルでは,各研究はそれぞれ異なる真の効果量μ+uiを持つことが仮定される。つまり,研究iのz相関係数ziは,zi=μ+ui+ei,ただし,ui~N(0,τ2),ei~N(0,υi)と定式化される。Borenstein et al.(2009)によると,本研究のように異なるデータを用いた論文から効果量を集めてメタ分析を行う場合には,一般的に言って,ランダム効果モデルの方がより適しているという。ランダム効果モデルをz相関係数にあてはめる際は,次のような2段階アプローチを用いた(例えば,Borenstein et al., 2009)。第1段階では,モーメント法(DerSimonian Laird法とも呼ばれる)によって研究間分散(研究間の異質性)τ2を推定した。第2段階では,τ2の推定値を用いてμを推定した。具体的には,τ2の推定値とデータから直接計算される研究内分散υiの和の逆数によって重みづけられたz相関係数の加重平均を求めた。最後に,加重平均されたz相関係数にz変換の逆変換,すなわち,r=[exp(2z)−1]/[exp(2z)+1]を施し,加重平均された相関係数を導出した。

メタ分析の結果は,表2のとおりである。まず,テキストの長さとレビュー有用性の相関係数を効果量としたメタ分析の結果によると,加重平均された相関係数はプラスで,0.1%水準で有意であった(r=.178,p<.001)。このように,ナラティブレビューだけでなく,メタ分析でも,テキストの長さとレビュー有用性はプラスの関係にあるという結果が得られた。なお,Q値は0.1%水準で有意であることから,研究間は異質であることがわかる。評価得点についての加重平均された相関係数は非有意であった(r=.061,p>.1)。また発信者写真の開示に関する加重平均された相関係数の符号はプラスで,0.1%水準で有意であった(r=.123, p<.001)。最後に,発信者の名前や住所の開示については,加重平均された相関係数は非有意であった(r=.020, p>.1)。このように,メタ分析の結果は,ナラティブレビューの結果と整合的であり,テキストの長さと発信者写真の開示はレビュー有用性を高めること,評価得点,および発信者の名前や住所の開示とレビュー有用性との間には,一貫した関係は見出されないことが確認された。

表2

メタ分析の結果

カッコ内は標準誤差。***は0.1%水準で有意,**は1%水準で有意,*は5%水準で有意。

5. 質的・量的レビューによるファインディングス

最後に,レビュー有用性の影響要因に関する質的・量的レビューの結果をまとめよう。テキストが長いレビュー,また発信者写真が開示されたレビューは,多くのhelpfulを獲得する。一方,評価得点とレビュー有用性との関係は,多くの研究において検討されてきたものの,実証結果は一貫していない。同様に,発信者が名前や住所を開示することがレビュー有用性に及ぼす影響も,一貫しない結果が得られている。テキストに内在する感情価と二面的な論点についても,メタ分析は行っていないものの,ナラティブレビューによると結果は一貫しない。既存研究では,覚醒度,怒りや心配などのレビュー特性,熟達性などの発信者特性,また製品特性の影響も検討されてきた。これらの要因については,実証結果の蓄積が待たれる。

IV. ディスカッション

ナラティブレビューとメタ分析は,テキストの長さと発信者写真の開示はレビュー有用性を高めることを示したが,同時に,実証結果が一貫しない要因が少なくないことも明らかにした。問題は,なぜ結果が一貫しないかである。一貫しない結果を得ること自体は,理論構築を妨げるものではない。むしろ,一見整合的でない結果を何らかの方法で整合的に説明することができれば,理論はより豊かになっていく。領域横断的な研究テーマで共通の基盤を持たないせいか,あるいは研究の進展スピードが速いせいか,これまでのレビュー有用性研究は,整合的でない結果が得られても,これを統一的に説明することに必ずしも積極的ではなかった。そのために,豊かな理論を構築する機会を逃してきたとも言えるだろう。なお,メタ分析は過去に得られた実証結果を量的な方法で統合するものであり,結果が一貫しないときに,その理由を教えてくれるものではない。

実証研究の結果が一貫しない根本的な原因は,既存研究が採用してきた実証研究の方法にあると考えられる。本研究で取り上げた2次データを用いた実証研究はすべて,集計レベルデータの分析であった。具体的には,レビューを単位とした集計レベルデータを,helpfulの数や割合を目的変数,レビュー特性,発信者特性,製品特性を説明変数とする回帰モデルにあてはめた。これにより,どんな発信者による,どんな製品についての,どんなレビューが多くのhelpfulを獲得するかが検討された。このような集計レベルデータを用いてレビュー単位の分析を行うという実証研究の方法は,受信者を考慮していない。あるレビューが獲得したhelpfulの数は,helpfulするか,しないかという個々の受信者による意思決定の結果を集計したものである。このhelpful意思決定は,レビュー特性,発信者特性,製品特性によって影響されると考えられるが,受信者間でこれらの特性に対する反応は異なりうる。これまでのレビュー有用性研究は,個々の受信者によるhelpful意思決定に注目してこなかったし,そのため,受信者反応の異質性が検討されることもなかった。異なる既存研究において用いられたデータは,それぞれ異なる受信者の集まりによるhelpfulを集計したものである。したがって,レビュー特性,発信者特性,製品特性に対する反応が受信者の集まりによって一定以上に異なるならば,結果が一貫しないのは自然な帰結である。

テキストの長さや発信者写真の開示についての結果が一貫しているのは,helpful意思決定に対して,テキストの長さや発信者写真の開示が及ぼす影響が,受信者間で同質的なためである。先に議論したように,クチコミサイトにアクセスする消費者は総じて購買関与が高いし(購買関与が低ければ,そもそもクチコミサイトにアクセスしない),ほとんどの消費者は,発信者写真を見ることで発信者を多かれ少なかれ信用したり,魅力的に感じたりするようになる。受信者反応が同質的であれば,レビュー単位の集計データを用いた分析でも,一貫した結果が得られる。

残された課題を解決するために,これからのレビュー有用性研究に要請されているのは,個々の受信者のhelpful意思決定に焦点をあて,これを説明しようとすることである。具体的には,受信者反応の異質性を考慮すること,第4の特性としての受信者特性をモデルに導入すること,そして,受信者反応が受信者特性によってどのように調整されるかを検討することが求められる。これにより,一貫しない結果が整合的に説明されるようになることが期待される。

斉藤 嘉一(さいとう かいち)

明治学院大学経済学部教授。博士(経営学)。主な著書は『ネットワークと消費者行動』(千倉書房)。現在の主な研究テーマは,ソーシャルメディアにおける消費者相互作用,クチコミ発信,消費者意思決定。

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