2021 年 41 巻 1 号 p. 68-81
本稿の目的は,COVID-19の流行に伴う職務環境の変化を営業・マーケティング職がどのような形で経験し,それにどう適応しようとしたのかを明らかにすることである。本稿では,2020年4月中旬から7月下旬にかけて,3,073名の就労者を対象に実施した質問票調査の分析を行った。その結果,営業・マーケティング職は,他の職種に比べ,①心理面では,4月調査では差が見られなかった不安感が7月調査では緩和され,差が拡大していること,②職務特性では,職務遂行プロセスの他者依存性(近接性)が4月から7月にかけて低下していること,③適応行動については,両利き行動の探索的行動は両方の時点で積極的に行えているものの,深化的行動は4月から7月の間で低下していることが明らかとなった。また,営業・マーケティング職の適応行動には,役割明確性や職務の裁量性,職務成果の他者依存性といった職務特性やその変化とリモートワークの実施が影響を与えていることも示された。