2022 年 41 巻 4 号 p. 71-79
メーカーではなくユーザーとして商業的に魅力的なイノベーションを起こすリードユーザーの存在が明らかになっているが,一般的にリードユーザーは企業外に存在するために,企業が継続的に活用することが難しい。一方では,企業内に自社が提供する製品やサービスのカテゴリーにおけるリードユーザーが存在することが明らかになっている。こうしたリードユーザーは,「企業内リードユーザー」(lead users inside the firm)とも呼ばれ,学術的に注目されている。本稿の目的は,企業内リードユーザーについて既存研究をレビューし,体系的に整理することである。レビューの結果,企業内リードユーザーがリードユーザーと従業員の二つの特徴を持つこと,企業内リードユーザーがアイデアの創造,アイデアの実行においてイノベーションに貢献していることが分かった。企業内リードユーザーの実態を明らかにすることは,リードユーザー研究を拡張するだけでなく,企業にとって自社の従業員を有効活用する上で貢献となるであろう。