2022 年 42 巻 1 号 p. 52-64
流通チャネル戦略に関する先行研究は,(1)企業成果として売上拡大のような有効性指標を用いてきた,(2)個々のチャネル戦術の組み合わせの効果を検討してこなかった,(3)チャネル構造の影響を看過してきた,という問題点を抱えている。本論は,これらの問題点を解決するために,結果として収益性を設定した上で,6つのチャネル戦術(関係特定的投資,コミュニケーション,パワー,コンフリクト,チャネル統合,および,デュアル・チャネル)の組み合わせの効果を探究する。ファジィ集合QCA(fsQCA)を実行した結果,高収益を生み出す4つのチャネル戦略パターンを同定することに成功した。本論は,個別のチャネル戦術ではなく,それらを組み合わせたチャネル戦略こそが,企業成果を左右するということを示唆することによって,チャネル研究の進展に貢献を成している。