2026 年 46 巻 2 号 p. 108-116
本研究は,乳児用液体ミルクの日本市場導入プロセスの分析を通じて,マクロソーシャルマーケティング(MSM)理論の発展を目指す。MSMは,多くの社会問題を複雑性を持つ厄介な問題として捉え,協働による社会システムの変革の必要性を強調する。しかしながら,具体的な介入策はシステム思考において断片的に提示されるにとどまっている。本研究は,レバレッジポイントの一つであるパラダイムシフトに焦点を当てる。母乳が最善であるとする日常のパラダイムが震災下に相対化されることで関係者間の協働が可能となるとともに,マーケティング・システムと結びつけられることで液体ミルクの導入が促進された。本研究は,ソーシャルグッドが競合しうる世界における政府と市場の役割を明らかにしている。