抄録
本稿では,人と生成AIが協働する新たな方法であるAIペアプログラミングによるソフトウェア開発の実践を対象に,特に暗黙知に着目し,人と生成AIの協働の方法について,知識の相互移転の観点から探索的に明らかにする。学術的には,生成AIベースのITケイパビリティと呼称しうる新たな組織能力の萌芽を特定し,その発現メカニズムとともに示す。その中核として,人とAIという異なる知の主体間における特異な双方向の知識移転プロセスが存在することを示す。具体的には,AIが解釈可能な方法で暗黙的な認識を含めて効果的に形式知化する能力及びその限界の認識,ならびにAIが生成したコード等の形式知の根拠について人が文脈とともに能動的に解釈・評価し内面化していく能力である。実践的には,人と生成AIの協働のプロセスを示し,新技術を駆使したソフトウェア開発の方法,そして人材教育への指針や実践上の手がかりを提供する。