抄録
本研究の目的は,多様な決済手段が利用できる状況下で,消費者の決済手段選択に関わる
要因を明らかにすることである。そのために長期間の実購買データを用いて状況的要因と個
人要因から選択を捉える階層ベイズモデルを提案した。分析の結果,少額ほど現金,高額ほ
どクレジットカードが多くなるという従来の知見に加え,①電子マネーは少額ほど多い傾向
にあること,②コード決済は金額の多寡に依らないこと,③その業態間での違いを明らかに
した。また,各手段の選択されやすさには,知覚リスク,価格価値,革新性が影響すること
を示した。