抄録
廃棄物処理分野におけるCDM事業活動では,当初予測していたよりも大幅に下回るクレジットしか認証されない事態が頻発している。本稿では特に廃棄物処理分野において主要なCDM事業活動である埋立地ガス回収のCDM事業活動に焦点を当て,クレジット (CER;Certified Emission Redution,認証排出削減量) の発行状況やベースライン排出量の推計モデル式を紹介し,CER発行率の低迷の要因について考察した。埋立地ガス回収のCDM事業活動のCER発行率を整理すると中央値は26.7%であった。また,メタン排出量推計モデル式の選択によるCER発行率への影響は小さいが,パラメータの設定による影響が大きいと考えられた。CDM事業活動における温室効果ガス排出量の推計においては,信頼性が不明で限定的なデータやIPCC等のデフォルトパラメータに依拠せざるを得ないことが多い。現場の実情を反映した十分な検討を経ずにこれらを用いることにより,現実とはかけ離れた排出量を推計することにつながっていると思われる。