2015 年 25 巻 2 号 p. 95-102
抗肥満・抗糖尿病薬の標的であるbombesin receptor subtype-3(BRS-3)は中枢系のほか、末梢系の消化管にも発現している。Merck社の中枢系作用型BRS-3アゴニストはラットやイヌで抗肥満作用を示すものの、副作用として体温・血圧上昇、心拍数増加が見られた。そこで、われわれは消化管BRS-3選択的に作用する、より安全性の高い薬剤の開発を目指した。自社ハイスループットスクリーニング(HTS)ヒット化合物とMerck社化合物の構造類似性から新規二環性ジアゼピンをデザインし、脂溶性低減を志向した極性基導入によって低中枢移行性化を行った。さらに、ごく僅かな中枢系曝露を回避するため、生体内代謝によって不活性化するアンテドラッグ11cを考案した。11cはマウス経口単回投与で摂食抑制作用を示すとともに、イヌ心血管系リスク評価では心拍数・血圧変動の減弱傾向を確認し、薬効と中枢系副作用回避の両立を達成した。