2019 年 29 巻 4 号 p. 165-166
創薬研究を取り巻く環境は、これまで以上に厳しさを増している。生体分子や再生医療を利用した治療法が近年注目されているが、このトレンドが永久に続くことは考えにくい。合成容易な低分子化合物が力不足になりつつある現状においては、複雑な構造と適度な分子量を有し、広いケミカルスペースを占める天然物の価値はますます大きくなっている。天然物は古来より、人類にとって重要な「くすり」であった。天然物誘導体は現在も医薬品の重要な割合を占めているが、構造展開とCMC確立の観点から、構造的な制約は依然として大きい。本特集では、独自の方法論を用いて複雑な構造を有する生物活性天然物の合成研究を進める研究者に依頼して、最新の研究成果をご執筆いただいた。本特集を通じて、複雑な構造を有する天然物の創薬展開が加速することを願う。