2019 年 29 巻 4 号 p. 193-197
天然物の推定生合成経路を活用した天然物の網羅的合成の試みについて紹介する。キノコ由来のステロイド系天然物chaxine類は、独自に推定したergosterolを前駆体とする生合成仮説に従って、光電子環状反応によって得られるtachysterolから6工程での効率的合成法を開発した。一方、ポリケチド系海産天然物oscillatoxin/aplysiatoxin類は、ジヒドロピロン構造を有する化合物を生合成上の共通中間体と推定、合成し、その環化反応によってoscillatoxin D関連物質の合成に成功した。そして、これら網羅的合成法によって得られた化合物群の生物活性評価によって、それぞれ新たな生物活性を見出した。