2020 年 30 巻 3 号 p. 137-144
抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)は、抗体に高活性な低分子薬剤をコンジュゲートした分子標的薬であり、開発研究が加速している。最近の研究で、位置特異的に薬剤をコンジュゲートしたADCは、ランダムに薬剤をコンジュゲートしたADCよりも機能が向上することが報告されている。今回、筆者らは次世代型の位置特異的に薬剤がコンジュゲートされたADCの開発を加速するため、位置特異的に抗体を官能基化する手法(AJICAP™法)を開発した。AJICAP™法は抗体のFc領域に親和性をもつペプチドを利用して、ペプチドが抗体と相互作用した際に近傍のリシン残基を位置特異的に官能基化する手法である。今回、特定のリシン残基が修飾されたAJICAP™-ADCを合成して生物学的な評価を行い、ランダムに薬剤をコンジュゲートしたADCよりも良好な治療濃度域(therapeutic window)を示したので紹介する。