2020 年 30 巻 3 号 p. 145-149
電解反応は古くから知られる合成技術であるが、装置や反応様式の複雑さもあり、これまで創薬分野への応用は限られてきた。本技術の創薬研究への適用を目指し、筆者らは探索合成に有用な新規電解反応の開発をアカデミアとの共同研究で進め、今回、新たに飽和炭素骨格上の炭素-水素(C-H)結合をフッ素原子に直接変換する手法を見出した。本手法はヒドロキシ基やカルボニル基など足掛かりとなる官能基を必要としないため、フッ素化類縁体の効率的な合成に役立つと期待できる。開発した手法をエーザイの社内化合物に適用したところ、tropaneの窒素α位C-H結合が効率的にフッ素化されることがわかった。合成されたフッ素化tropaneのdrug-likenessを評価したところ、P-gpの基質性やhERGおよびNav1.5とチャネル阻害性に大幅な改善が認められた。