2021 年 31 巻 1 号 p. 25-29
ヒトゲノムの解読に続くRNA研究の進展により、RNAは細胞内情報伝達と遺伝子調節に重要な役割を担い、かつ多くの疾患に関与していることが明らかになってきた。従来、低分子創薬ではドラッガブルなタンパク質を選定し疾患治療の標的としてきたが、RNAを標的とすることができれば新たな創薬機会の創出が期待される。2020年8月、脊髄性筋萎縮症の低分子治療薬としてSMN2 mRNAを標的とするrisdiplamがFDAから承認を受けた。このことを契機として、RNAを標的とする低分子創薬の可能性が現在活発に議論されている。本稿ではRNAを標的とした創薬研究の歴史を紐解くとともに、SMN2スプライシング調節薬risdiplamの創製経緯を概説することで、RNAを標的とする低分子創薬の展望について述べる。