2021 年 31 巻 4 号 p. 194-199
現在、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン療法としてmRNA分子が用いられている。しかしながら、用いられているmRNAワクチンは、パンデミック下で一時的に緊急承認されたものであり、デリバリー法、品質・純度、安定性・効果持続性、タンパク質合成効率などの面に解決すべき課題が存在する。一方、mRNA医薬の開発研究は、主にデリバリー手法の開発に集中しており、mRNAの製造法に関しては生物学的な手法のみが用いられ、今後その分子設計法や合成法の開拓が重要となる。筆者らはmRNAの翻訳反応メカニズムに着目し、その律速段階を促進することで、翻訳反応サイクルを加速できる分子デザインを提案する。このmRNA分子デザインによってmRNAの翻訳効率と安定性を向上させることができることを実験データに基づいて解説する。