2022 年 32 巻 3 号 p. 140-144
細胞内のタンパク質を小分子や光で制御する化学遺伝学および光遺伝学技術は、創薬研究や細胞医薬開発における重要な基盤ツールとなる。しかし、タンパク質は標的ごとに構造、機能、機能発現機構が異なるため、さまざまなタンパク質の活性制御に適用できる汎用的な手法は未だ開発されていない。本稿では、筆者らが最近考案した、人工相分離ドロップレットを用いたタンパク質活性操作技術を紹介する。本技術では、人工タンパク質の自己集合を利用して細胞内に相分離ドロップレットを構築し、小分子や光を用いて標的タンパク質をその中へ隔離(不活性化)もしくは放出(活性化)することができる。人工ドロップレットによるタンパク質の隔離と放出という原理は、さまざまなタンパク質の活性制御を実現する新たな生命操作・創薬基盤技術としての展開が期待される。