訪問診療は,高齢者医療や在宅終末期医療などの増大する医療需要に応えるため,わが国において外来・入院診療と並び,医療提供の重要な部分を占めてきている.しかし,訪問診療を担う医師に対する教育内容やその効果に関する研究は発展段階である.本研究の目的は,訪問診療研修で得られる教育効果を,研修医の主観的経験を質的に分析し,明らかにすることである.
1)フォーカスグループ・インタビューによる質的調査を行った.
2) 平成16年4月から平成17年3月にかけてBクリニックで行われた訪問診療を方略とした研修を,計画していた回数の75%以上出席したA病院の初期臨床研修医9名を対象とした.
3) 患者・家族の本心に配慮したコミュニケーションの認識,患者・家族中心の診療態度・価値観の形成,身体的問題を越えた問題の認識と対応方法の実践的習得,他職種の役割の認識と連携方法の習得,療養の場のオプションの認識と選択方法の習得,自分が診療している地域を知る,地域の医療資源と訪問診療の役割の認識,限られた資源の中での医学的知識・技術の活用方法の習得の8つのカテゴリが抽出された.
4) 訪問診療研修は,医師臨床研修において病棟・外来研修と相補的な教育効果が期待でき,研修の場としての有用性が示唆された.