医学・医療福祉系大学教育において,文化人類学が果たしうる役割の第一は,異文化(他者)理解の視点の提供・養成である.文化相対主義およびホーリズム等の視点は,文化的能力の基盤として位置づけられるだろう.第二に,文化人類学は,例えば「正統的周辺参加」論のように,医学・医療福祉系教育において理論的な貢献もしてきている.第三に,人類学の方法論であるエスノグラフィーは,今後,医療福祉分野における質的研究においてさらなる活用の可能性をもっている.今後の医学・医療福祉系教育を考えるにあたり,人類学者と医療者との建設的な対話の促進が望まれる.