抄録
科学的思考および批判的吟味の基盤となるのが日本語運用能力であるとすると, それを涵養する日本語リテラシー教育の充実は, 医学部において重要な課題であると言える. 特に近年の生成AIの台頭も踏まえると, 読解リテラシーの向上は喫緊の課題ですらある. 本稿では, 医学部初年次における, 読解に特化した必修の日本語リテラシー授業の実践報告を行い, その課題を分析する. 少人数の輪読形式の授業をデザインし, 年度末の会議を経て授業を改善するというサイクルを繰り返した結果, 学生の読解には主に3つの困難パターン (拾い読み, プロセスの不十分な理解, 図表の読み飛ばし) があることが認められた. 授業実践の記述の参照枠組みとして, 哲学者ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム論」を用い, 自然科学における用語の習得を, 語の使用の観点から捉えることで, この実践に適切な記述・分析の観点を与えた.