医学教育
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基本的神経診察法に関する客観的臨床能力試験: 妥当性および評点と学習行動との関連性
大西 弘高小田 康友江村 正山城 清二小泉 俊三
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2000 年 31 巻 4 号 p. 265-270

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抄録

【目的】学生が習得すべき基本的神経診察法に関する客観的臨床能力試験 (以下神経OSCE) の役割とその妥当性, およびその評点と学習行動との関連について評価する.【対象と方法】31項目からなる基本的神経診察法の要点を学生に示し, 小グループ実習を実施した後, これが評価項目であることを提示し自己学習を促した上で1週間後に上記31項目に基づく神経OSCE (各0-2点) を実施した. 対象は, 平成10年8月から10月にかけて基本的神経診察法実習を受けた佐賀医科大学医学科6年次生44名. OSCE評価表による診察技能の評価と共に, 自己評価・緊張度・OSCE前の自己学習および練習時間, 練習相手の有無といった学習行動に関する項目に関して質問票を用いて回答を求め, 神経OSCEの評点との関連性を統計学的に分析した.【結果】神経OSCEの項目間において内的一貫性はα計数=0.731を示し, 合計の平均点は51.2±6.6点であった. 評点と統計的に有意な関連を示した学習行動の項目はOSCE前の練習時間, 受験時の緊張度であり, 自己学習時間や自己評価は評点と関連しなかった. 高得点者は, 受験前により長く練習し, 受験時の緊張度が高かった.【結論】われわれの考案した神経OSCEは自己学習時間より練習時間とよく相関し, 神経運動領域の評価法として概念的妥当性を有していることが示唆された.緊張度が評点と関連することについては, その意味するところをさらに調査する必要があると思われた.自己評価が評点と関連しないことに関しては, 神経診察法については現状の卒前教育レベルでは学生自身による自己学習の目標設定が不十分であることが予測され, 神経OSCEによる客観的評価の場を設けることが学習目標を明確にし, 適切な学習行動を導くうえで有用であると思われた.

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