医学教育
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医療の安全
研修医の視点より見つめた医療の安全への意識調査
早野 恵子小川 久雄江上 寛本村 和久徳田 安春安次嶺 馨東 大弼東 理
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2006 年 37 巻 2 号 p. 77-83

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抄録

2004年より卒後臨床研修必修化が始まり, 幅広い臨床研修が可能になるという利点がある一方, 研修医の医療事故への対策や教育病院の研修環境の整備が必要になってきた. 本稿では, 1. 医療の安全に関する研修環境の把握と分析, 2. 医療の安全に関する研修医の意識調査 (調査年度: 2003年) の結果および研修医からの提言を報告する. 方法は, 熊本大学附属病院, 沖縄県立中部病院, 熊本赤十字病院の研修医計76名に対して, 医療の安全に関するアンケート調査を実施・分析した. アンケートの回収率は全体で70.3%, その内85.5%の研修医がそれぞれとても忙しい, やや忙しいと感じており, 勤務時間の中央値 (98~105時間/週) の差は少ないものの, 忙しさの内容・質においては病院格差がみられた. 76.3%の研修医が医療事故への不安を感じていた. 医療の安全への提言 (自由記述) には, 個人の努力を強調する意見や互いの監査のシステム, 形骸的な医療事故対策の現状への批判, リスクマネジメントの本質などさまざまな意見が含まれていた. 3つの教育病院の研修医はいずれも長時間の労働と多忙とともに医療事故への不安を感じていた. 研修医の多くは潜在的医療事故や医療事故を体験・報告しており, 1. 研修環境の改善, 2. 研修医への支援システムの確立, 3. 診療録や医療器具の配置の統一を提言していた. 医療の安全の改善のためには病院の組織的あるいは研修プログラムの構築への取り組みに加えて, 研修医の視点からの自発的な問題提起が重要であると思われた.

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