医学教育
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研修開始時に研修医が具有しているべき能力
卒前医学教育から卒後研修への移行についての考察
田辺 政裕平出 敦大西 弘高植村 和正岡田 唯男木川 和彦日下 隼人下 正宗高橋 勝貞田中 雄二郎松村 理司
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2008 年 39 巻 6 号 p. 387-396

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抄録

新医師臨床研修制度において卒前医学教育と卒後研修の研修業務との乖離は, 医学生が研修医として働き出す際の障壁になっている. このような卒前から卒後への移行のギャップは, 研修医, 指導医のストレス増大, 医療過誤の要因にもなっている. 本研究では, 研修医が具有しているべき臨床能力について調査し, 現状の卒前から卒後への移行の問題点を探った.
1) 全国の大学附属病院及び臨床研修病院343施設の研修担当責任者を対象に研修医が異なる研修時期にそれぞれ具有しているべき能力 (期待能力) について調査し, その結果を解析した.
2) 343施設中134施設 (39%) から回答が得られた. 研修医が具有しているべきと回答した施設の割合 (期待率) と各時期の期待率を累積した値 (累積期待率) を算出した.
3) 実質的に研修がスタートするオリエンテーション終了時に累積期待率が50%以上であった期待能力は, 調査した全項目 (141項目) 中43項目 (30%) に過ぎなかった.
4) 研修開始時に期待率が50%以上であった領域は, 医学と関連する領域の知識と診療技能の生理学的検査のみであった.
5) オリエンテーション終了時に累積期待率が50%未満の身体診察, 一般手技は, 泌尿・生殖器診察, 小児の診察, 静脈内留置針や導尿カテーテルの挿入と留置などであった.
6) 研修開始時の研修医の臨床能力と研修医に要求される業務にはギャップのある可能性が高く, この問題を卒前医学教育, 卒後研修によってどのように解決できるのか, 早急に検討する必要がある.

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© 日本医学教育学会
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