人間・環境学会誌
Online ISSN : 2432-0366
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現象学的心理学からみたトランザクショナリズム(<特集>トランザクションの読解と展開)
太田 裕彦
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2010 年 13 巻 2 号 p. 62-68

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抄録

現象学的心理学の基盤である現象学は、意識の「志向性」、「現象学的還元」による素朴な定立の判断中止、「本質直観」による個別現象を越えた本質の把握を重要な視点としている。現象学的視点に立てば、人間は世界の内に存在する自我としてのみ存在しうる。この人間にとっての環境世界は人間のさまざまな価値によって彩られた主観的な生活世界である。さらにハイデガーによれば世界は主体と他者とが分かち持っている世界である。一方、トランザクショナリズムは、人間と環境の関係性を要素的ではなく全体的構造として捉えるべきであるという基本的観点に立脚し、時間とともに生じる変化そのものも重視する。また因果関係の追及よりも心理現象の実体や本質そのものを構造の記述と理解を通じて捉えようとする。その一方で複数の諸原理を折衷して適用する柔軟性も備えている。この現象学的心理学とトランザクショナリズムとの共通性と差異牲を検討し、今後の展望を考える。

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© 2010 人間・環境学会
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