本稿は、まちの居場所としてのコミュニティシネマにおける交流や参画の様態を明らかにする。特に周辺地域の人々の希求意識に応えて幅広い種類の映画上映機会を提供するコミュニティシネマを通じたまちの居場所づくりの事例に着目し、2000年代以降に新設のシアターから規模や併設機能が異なる3事例を選定した。各運営者へはヒアリング調査を、規模が最大でイベントの多様な事例では来場者20名へのアンケート、ヒアリング、また行動観察調査を行った。運営者は、来場者やそのまちの人々と様々な取り組みを通じてつながりを深める意識がみられ、来場者は、映画を主目的とせずにふらっと立ち寄ったり、映画を介して交流の輪を広げていることがわかった。
シアターにおける来場者の主体的な参画の段階を梯子に見立てて試論的にまとめると、来場者の主体的な参画を生み出すために運営者が心掛けるべき指標は、人的環境としての〔来場者とのつながり〕、物的・事的環境としての〔取り組み〕があり、これらが段階に影響している。参画の段階が上位になるにつれ、来場者とのつながりは運営者・スタッフによる市かけのみならず、来場者同士の市かけが発生する。また、来場者が当事者意識を持っためには随時的に長期間行われるイベントが求められる。来場者は様々な周期・期間で行われるイベントによって参画の機会を得たり、当事者意識を抱き主体的に参画するようになる。