抄録
建築的情景の様な複雑でまとまりをもった情景についての,形態的認知に関する機械的な合理性は十分な実験的検証がなされていない。本論では,被験者にとり既知の建築的情景のスライドを,高速眼球運動を前提とし,時間的に累積的にスクリーンに提示し,間欠的に短期記憶の維持リハーサルによる学習を前提としたスケッチをさせる事により,形態的に機械的合理性をもつ認知行為部分の分析が行われた。分析にあたり,提示された建築的情景の画像のコンピューター画像処理を行い,エッジの強度検出と明度による分別,及び,明度別のエッジ・トレースによる面分割を実施し,建築的情景の量塊の陰影の深さによる明暗に応じた段階的画像に分析し,人間の眼球運動が実験のスライド提示時間に応じ明るさに順応するモデルを作成した。これにより被験者のスケッチの結果のうち形態的認知に関する機械的合理性をもって説明できる部分の他に,被験者コメントや実験方法の考察から,それ以外の因子(意味/価値,図式)をともなってはじめて説明できる,即ち知覚循環的分析が必要とされる部分がある事が指摘され,今後の分析課題として提示された。