抄録
昭和38年5月と9月の各1カ月間, 東京都内でブタの多頭飼育を行つている4戸の農家のハエ調査を行い, ブタの飼育方法と発生するハエ数について検討した.1.採集されたハエ数は, 5月には総数30, 014個体で, そのうちヒメイエバエ3, 535個体, オオイエバエが898個体であつた.イエバエは353個体で全体の1.2%にすぎなかつた.また9月には総数18, 240個体で, 5月より少なかつたが, イエバエは5, 333個体できわめて多く採集された.サシバエ, ニクバエが比較的多く, またヒメイエバエはわずかに278個体, 1.5%であつた.2.採集場所別にハエ数をみると, 住宅内の台所と居間では種類および数にほとんど差がなかつた.イエバエは住宅内では37.2%でもつとも多く, また, イエバエ, ヒメイエバエ, オオイエバエに高い家屋侵入性が認められた.住宅外では「その他」の小型のハエが圧倒的多数を占めていた.しかしブタの餌として食堂残飯などを利用する場合には, これがイエバエ成虫の好適な餌となるので, 餌調理場などでもかなりのイエバエが採集された.また, 家屋が開放的な農家住宅の場合には, イエバエなど家屋侵入性の高いハエ類が住宅内で多数採集される傾向がみられた.3.調査農家別に採集されたハエ数をみると, 各農家間のハエ数は異なり, とくにNo.1の農家のハエ数はいちじるしく高かつた.各農家のハエ数とブタの飼養管理の適否との間にはきわめて関係があつた.すなわち, 衛生的な配慮がはらわれ, 積極的に施設改善を行つている農家のハエ数は少なく, ブタの糞便や餌の食べ残しを敷地内に堆積しておくような原始的な飼育方法をとつている農家のハエ数はきわめて多かつた.しかしブタの多頭飼育を行う場合における, 完全なハエ発生防除という問題には多くの困難が予想される.