衛生動物
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ユスリカアレルギーに関する基礎的研究 : I. 日本産ユスリカ数種の培養法
河合 幸一郎小西 健一
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1986 年 37 巻 1 号 p. 47-57

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抄録
ユスリカアレルギーの正確な診断および効果的な減感作療法に必要な精製抗原を得る目的で, 都市圏内に発生する数種のユスリカの培養法を検討した。その結果, いずれの種も実験室内で累代飼育が可能であることがわかった。幼虫の飼育方法については, Glyptotendipes tokunagaiの場合, 川砂を敷き, 脱塩素水を入れた径30cmの容器に(cm)^2あたり1個体の密度で孵化直後の幼虫を接種し, 25℃でエアーレーションを施し, 個体あたり15mgのコイ用飼料を与えることにより, 高い生残率で成熟幼虫が得られることがわかった。一方, Chironomus yoshimatsuiおよびChironomus flaviplumusでは, 径15cmの容器を用い, 同様の条件下でそれぞれ(cm)^2あたり8個体の密度, 個体あたり7.5mgの投餌量および(cm)^2あたり4個体の密度, 個体あたり7.5mgの投餌量で飼育することにより, 効率良く成熟幼虫が得られた。採卵法については, G. tokunagaiでは, 性比を♀5に対し♂2以上にすることにより, 成虫密度が低い場合でも小型容器内で十分受精卵が得られ, C. yoshimatsuiでは, 夕方に相当する照明時間帯を設け, 相対湿度を80%以上に保つことにより, 成虫密度が低い場合, あるいは♂の個体密度を♀の1/4まで下げた場合でも, 比較的狭い空間(高さ30cm)で高い受精率を得ることが可能であることがわかった。一方, C. flaviplumusの場合, 夕方に相当する照明時間帯に21x程度まで段階的に減光し, 性比を♀1対♂2とすることにより, 受精率は低いが比較的狭い空間(高さ50cm)でもかなり多数の受精卵塊が得られることがわかった。
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© 1986 日本衛生動物学会
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