日本組織適合性学会誌
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総説
pH 応答性ポリマー修飾リポソームを用いた抗原デリバリーとがん免疫治療への応用
弓場 英司
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2013 年 20 巻 3 号 p. 181-189

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抄録

がん免疫治療の達成には,樹状細胞のサイトゾルに抗原を導入し,抗原特異的な細胞性免疫を誘導できるキャリアが必要である。我々はこれまで,線状もしくは多分岐状の3- メチルグルタリル化ポリグリシドール(それぞれMGlu-LPG,MGlu-HPG)を固定化したリポソームによるサイトゾルデリバリーについて検討してきた。本稿では,pH 応答性ポリマーを固定化したリポソームによる抗原のサイトゾルデリバリーと,がん免疫治療への応用について検討を行った。MGlu-LPG もしくはMGlu-HPG 修飾リポソームは,樹状細胞のサイトゾルにモデル抗原オボアルブミン(OVA)を効率良く導入し,MHC クラスI を介した抗原提示を誘導した。これらのリポソームをマウスに皮下投与すると,抗原特異的な細胞性免疫が誘導され,抗原を発現したがん細胞のみが担がんマウスから排除された。したがって,pH 応答性ポリマー修飾リポソームはがん免疫治療のための抗原キャリアとして有用である。

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© 2013 日本組織適合性学会
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