ミルクサイエンス
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原報
Penicillium roqueforti の小麦ふすま培養により生産する 2 種類の菌体外プロテアーゼ
井越 敬司原 裕直小林 弘昌
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2007 年 56 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

 ブルーチーズのタンパク質分解を明らかにするため,カビの培地としてよく使用される小麦ふすまを用い,Penicillium roqueforti KTU-11 が生産するプロテアーゼについて調べた。14日間培養後,ふすま培地よりリン酸緩衝液(pH 6.0)によって酵素が抽出され,DEAE-トヨパールにてプロテアーゼが分離された。その結果,未吸着および吸着画分よりそれぞれ 1 種類のプロテアーゼ(P1 および P2 プロテアーゼ)が分離された。P1 プロテアーゼは至適 pH を6.0,至適温度を60℃に有し,エチレンジアミンテトラアセテイトおよび 1,10-フェナンスロリンによって強く阻害されるメタルプロテアーゼであった。P2 プロテアーゼは至適 pH を 6.0,至適温度を50℃に有し,ペプスタチンによって強く阻害されるアスパルティックプロテアーゼであった。カゼインに対する作用を Sodium dodecyl sulfate 電気泳動で調べた結果,P1 プロテアーゼはカゼインを細かく分解したが,P2 プロテアーゼは 4 種類のカゼイン分解産物を生成し,そのうち一つはパラ κ-カゼインと同じくする成分であった。P2 プロテアーゼのこの分解はブルーチーズ中の分解産物と電気泳動上一致することから,P2 プロテアーゼはブルーチーズ熟成中のタンパク質分解に寄与する酵素と考えられた。

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© 2007 日本酪農科学会
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