ミルクサイエンス
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原著論文
粉乳製品中のビフィズス菌数測定法:懸濁液の影響とビフィズス菌種選択的培地の開発
武藤 正達宮内 浩文清水(肖) 金忠阿部 文明
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2015 年 64 巻 1 号 p. 15-23

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抄録

 Bifidobacterium (B.) longum subsp. longum (Blon), B. breve (Bbre), B. animalis subsp. lactis (Blac) はビフィズス菌種の中でも最もよく粉乳に添加される菌種である。これまで発酵乳や発酵工程を含まない乳,粉乳,スターターカルチャーに含まれるビフィズス菌の菌数測定法については国際標準法が発行されている。本標準法では,培地としてムピロシンを添加した転移ガラクトオリゴ糖プロピオン酸(TOSP)寒天培地,希釈液として 1/4 強度リンゲル溶液もしくは他の適切なものが指定されているが,まだ改善の余地がある。我々は以前,菌数測定時に使用する希釈液が粉乳製品中のビフィズス菌数値に大きく影響を及ぼすことを示し,リンゲル溶液よりも光岡バッファーを使用する方が有意に高い菌数値を示すことを報告した。本研究では,粉乳製品に含まれるビフィズス菌を効率よく検出することができる懸濁液の開発及び特定のビフィズス菌種を選択的に検出する培地に関する検討を行った。光岡バッファーに Tween-80とペプトンを添加することにより,粉乳に添加されたビフィズス菌の検出率が上昇した。各種ビフィズス菌を含む19種の粉末市販製品を用いて菌数測定を行ったところ,従来の光岡バッファーよりも改良光岡バッファーを使用する方が有意に高い菌数が検出された。また,菌種選択的培地の開発については,RCM agar の培地成分に単一糖源としてそれぞれ L-アラビノースと D-ソルビトールもしくは D-マンニトールを添加した培地することにより,それぞれ Blon と Bbre を選択的に検出することが可能になった。これらの結果は,粉乳製品に含まれるビフィズス菌数の効率的な検出,及び特定のビフィズス菌種の選択的な菌数測定に対する有用な情報を提供する。

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© 2015 日本酪農科学会
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