ミルクサイエンス
Online ISSN : 2188-0700
Print ISSN : 1343-0289
ISSN-L : 1343-0289
原著論文
ウシラクトフェリン+ラクトパーオキシダーゼの口臭抑制作用とメカニズムの検討
中野 学新 光一郎若林 裕之山内 恒治阿部 文明
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 64 巻 2 号 p. 107-114

詳細
抄録

 ラクトフェリン(LF)+ラクトパーオキシダーゼ(LPO)配合錠菓の有効性の予備的検討として,口臭抑制効果とその持続性を他の口臭対策食品と比較した。また,LF+LPO の口臭抑制作用機構の検討として,口腔内細菌に対する影響を in vitro 試験で調べた。
 口臭抑制効果の検討では,口臭のある健常ボランティア 5 名が LF+LPO 配合錠菓を摂取したところ,摂取前と比べて摂取10分後,1 時間後および 2 時間後において硫化水素,メチルメルカプタンおよび総揮発性硫黄化合物濃度が有意に低下した。一方,ミント錠や緑茶の摂取では有意な減少は観察されなかった。
 殺菌活性試験では,8 mg/ml LF+LPO 含有粉末組成物は約 7 log cfu/ml の Porphyromonas gingivalis を30分間のうちに検出限界以下(2.7 log cfu/ml)まで抑制した。口臭産生に関わる含硫アミノ酸リアーゼに対する阻害試験では,8 mg/ml LF+LPO 含有粉末組成物の作用30分後に,P. gingivalis のシステインおよびメチオニンを基質としたリアーゼ活性がそれぞれ約85%および約80%低下した。バイオフィルム形成抑制試験では,0.05 mg/ml 以上の濃度の LF+LPO 含有粉末組成物は P. gingivalis のバイオフィルム形成量を半分以下に抑制した。
 以上の結果から,LF+LPO 配合錠菓の摂取は短期的な口臭抑制に有効である可能性が示唆された。短期的な口臭抑制効果には,口腔内細菌に対する殺菌活性および含硫アミノ酸リアーゼ阻害活性が関与すると考えられる。また,低濃度の LF+LPO 含有粉末組成物がバイオフィルム形成抑制活性を示したことから,長期的な口臭抑制も期待される。今後,プラセボ錠菓を対照とした臨床試験において有効性の検討が必要である。

著者関連情報
© 2015 日本酪農科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top