ミルクサイエンス
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原著論文
Propionibacterium freudenreichii ET-3 で培養した乳清発酵物は特異的に遠位大腸の収縮頻度を亢進させる:ラットを用いた in vitro での評価
内田 勝幸森久保 桂子岩澤 佳緒里
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2015 年 64 巻 3 号 p. 215-221

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抄録

 便秘は著しく生活の質を低下させるだけではなく社会経済的にも大きな損失となっている。乳清を Propionibacterium freudenreichii ET-3 で培養した発酵物(乳清発酵物)はビフィズス菌を増加させて便秘を改善する作用を持っていることが臨床試験で明らかにされている。しかし,大腸の運動に対しどのような作用を示すかについては明らかになっていない。そこで,今回の試験では部位差についても評価するため,ラットの近位,中位および遠位大腸について収縮力および収縮頻度に与える乳清発酵物の作用を in vitro で評価した。乳清発酵物は遠位大腸に対し濃度依存的に収縮頻度を有意に増加させた。しかし,収縮力には影響しなかった。一方,近位および中位大腸の収縮力および収縮頻度に対しては何ら影響を示さなかった。乳清発酵物に含まれる 1,4-dihydroxy-2naphthoic acid (DHNA) はビフィズス菌の増殖作用を示すことが明らかになっているが,大腸の収縮力および収縮頻度には作用を示さなかった。さらに乳清発酵物に含まれるプロピオン酸および酢酸も何ら作用を示さなかった。以上の結果から,乳清発酵物は排便に重要な役割を果たしている遠位大腸に対し特異的に収縮頻度を増加させることが明らかになった。また,収縮力を増加させないことは収縮力の増加による腹痛を引き起こさないことから便秘に対する乳清発酵物の有用性を示す結果と考えられた。

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© 2015 日本酪農科学会
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