ミルクサイエンス
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原著論文
免疫流動食へのウシラクトフェリンの配合
武田 安弘瀬戸 菜実子橋本 潤一篠田 一三高瀬 光徳東 徳洋
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2015 年 64 巻 3 号 p. 223-233

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抄録

 免疫流動食は,外傷や手術を受けた(受ける)患者の感染症リスクの低減,入院期間の短縮などを目的として使用されるもので,アルギニン,グルタミン,n-3 系脂肪酸,核酸,微量元素などの成分が強化されている。本試験では,免疫賦活成分としてアルギニン,グリシン,グルタミン,核酸,及び多機能性たんぱく質ウシ・ラクトフェリン(bovine lactoferrin, bLF)を配合した試験免疫流動食を作製し,流動食中の bLF の保存性,及び作製した試験免疫流動食の生理活性について検証を行った。bLF は通常,加熱殺菌処理により容易に変性してしまうが,酸性条件下(pH 2.7)で直接加熱・超高温殺菌法に供することにより,熱変性を抑え,流動食に配合することができた。作製した流動食中の bLF は,25℃または37℃で 9 か月間保存した後も抗原抗体反応活性を維持し,非常に安定であることを確認した。本流動食中の bLF は鉄飽和度が高く,未分解のままでは大腸菌に対して静菌活性を示さなかったが,胃内消化を想定したペプシン分解物では抗菌ペプチドであるラクトフェリシンが生成されることを確認し,実際に強い抗菌作用を呈した。免疫賦活成分としてアルギニン,グリシン,グルタミン,核酸及び bLF を配合した上記の試験免疫流動食を90日間摂取したマウスでは,統計的に有意ではないものの,回腸絨毛の伸長が確認され,また,統計的に有意な腸内細菌叢の変化が見られた。これらのことから,本試験で作製した常温・長期保存が可能な免疫流動食の摂取により腸内環境改善を介した感染リスクの低減効果が期待された。

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© 2015 日本酪農科学会
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