ミルクサイエンス
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原著論文
Lactobacillus reuteri DSM 20016T が持つ腸管粘膜定着因子の疑似的消化管環境における持続性
小林 達哉辻 聡梶川 揚申
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キーワード: Lactobacillus reuteri, adhesin
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2016 年 65 巻 3 号 p. 171-178

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抄録

 Lactobacillus 属細菌の一部は動物消化管に常在し,それらの一部はプロバイオティクスとして利用されている。Lactobacillus reuteri は様々な動物腸管内に分布し,腸内共生微生物のモデルとして定着機構の解明が進められている。これまで,L. reuteri の腸管粘膜定着因子として複数のタンパク質が報告されている。我々は L. reuteri DSM 20016T がもつ腸管粘膜定着因子が消化管環境でどのように変化しうるのかを調べることを目的とし,研究に着手した。疑似的な消化管環境に L. reuteri DSM 20016T を曝した結果,腸管粘膜定着因子タンパク質は疑似胃液に対する耐性が比較的高い一方,疑似腸液に対しては感受性を示した。腸管粘膜定着因子の発現がどのように変化するかを RT-qPCR により調べた結果,それぞれの腸管粘膜定着因子は通常培養時に比べて遺伝子発現が促進される傾向にあることが示された。結論として,本研究の in vitro の試験において,L. reuteri の菌体および菌体表層に存在する腸管粘膜定着因子は消化作用によりダメージを受ける一方,それらの遺伝子発現は増強され得る可能性が示された。

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© 2016 日本酪農科学会
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