ミルクサイエンス
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原著論文
βラクトリン高含有ホエイペプチドによる海馬での神経新生への効果
金留 理奈阿野 泰久
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2019 年 68 巻 3 号 p. 159-166

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抄録

 高齢化社会が進む日本国内において,認知症や認知機能の低下は大きな社会関心事となっている。しかしながら十分な治療方法が開発されていないため,日常生活を通じた予防は関心が高まっている。近年の疫学調査によると乳製品の摂取は老後の認知機能低下を予防することが知られている。我々の研究グループでは,カマンベールチーズなどPenicillium菌で熟成したタイプの乳製品に多く含まれるβラクトグロブリン由来のグリシン–スレオニン–トリプトファン–チロシン(GTWY)テトラペプチドであるβラクトリンが,脳内のモノアミン量を増加し認知機能を改善することを,モデル動物を用いた試験で報告した。また,プラセボ対照二重盲検試験において,βラクトリン高含有ホエイペプチドがヒトの認知機能を改善することを報告した。しかしながら,ホエイペプチドの脳への作用は十分解明されていない。そのため,本研究では,βラクトリン高含有ホエイペプチドが神経細胞へ及ぼす影響を評価するため,海馬神経新生へ及ぼす影響を評価した。βラクトリン高含有ホエイペプチドを1週間摂取させたICRマウスの海馬神経新生を組織学的に探索した結果,対照群に比べてβラクトリン高含有ホエイペプチド摂取群では海馬歯状回における5–bromo–2′–deoxyuridine(BrdU)陽性細胞数が有意に増加した。また,BrdU陽性細胞は神経細胞のマーカーであるDoublecortin(DCX)やNeuNとの共染色で神経細胞であることが確認された。さらに,βラクトリン高含有ホエイペプチド群では海馬ノルエピネフリン量が増加することが確認された。これらの結果より,βラクトリン高含有ホエイペプチドの摂取は海馬ノルエピネフリン産生増加や,海馬歯状回における神経新生を促進することが示され,これらの作用が認知機能改善に繋がっている可能性が示唆された。

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© 2019 日本酪農科学会
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