民族學研究
Online ISSN : 2424-0508
宮廷儀礼から民衆儀礼へ : ベンガルのドゥルガ女神祭祀における動態的記述の試み
外川 昌彦
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1992 年 57 巻 2 号 p. 174-196

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抄録

本稿は, ベンガル・ヒンドゥの最大の年中行事であるドゥルガ・プジャの祭祀組織の分析を行っている。今日のドゥルガ・プジャの拡大は, 祭主と崇拝者とが一元化したコミュニティ・プジャの確立によって, もたらされたと考えられる。そのことは, イギリス植民地統治の前後にわたる, ヒンドゥ王権の祭祀, 英領期の富裕層の祭祀, 独立運動下の民衆の祭祀組織を通して検討され, 祭主と崇拝者の差異化とその一元化という祭祀構造の変化が指摘される。更に今日のコミュニティ・プジャにおける, 人々の主体的な参加と自立的な祭祀組織の形成を, カルカッタ市街地の調査事例を踏まえて検証する。歴史的事例と調査事例とは対照され, そこに階層化と平等化の構造的ベクトルが作用していることが指摘される。王権の解体と人々の自立的な祭祀の解釈が, この祭祀組織の構造変化をもたらし, 今日のドゥルガ・プジャの拡大を可能にしたことが示されるであろう。

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© 1992 日本文化人類学会
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