超音波診断装置は医療分野で広く普及しており,超音波断層画像を用いた医用診断は大きな成果をあげている.しかし,断層画像を用いた診断には医師の経験や熟練を必要とする.生体の音響特性を利用し定量的な診断情報を得ようとする試みも行われてはいるが,生体組織の大きな特徴である不均一な構造すなわちテクスチャは十分に考慮されておらず,有用な定量診断情報は得られていない.著者らは,不均質媒質である生体組織構造と音響特性の関係を体系的に明らかにするとともに,臨床に適用できる超音波定量診断技術の開発を行ってきた.生体組織の二次元音響特性分布を高精度に計測し,病変による組織の物理的変化と音響特性変化との間の明確な相関関係を見出した.また,音響特性の検討結果から病変のモデルを構築し,超音波画像を用いた肝臓中の不均質構造の定量的な評価法について検討を行い,臨床的な評価を進めている.