2010 年 28 巻 5 号 p. 351-361
本論文では胸部X線像から肺結節を検出するための新たな対側差分法を提案する.この対側差分法は元画像と左右反転像の大局的位置合わせ,および,局所的位置合わせのために本論文で新たに提案する手法を用いる.本論文では,JSRTデータベースの腫瘤画像の中で結節検出の難易度が2(非常に困難),3(困難),4(比較的容易)である107枚の画像を用いて,提案手法によって得られた差分画像の画質を評価した.評価は一人の放射線診断専門医が行った.まず差分画像の画質を肋骨除去の観点から評価し,3(adequate or better),2(poor),1(very poor) の評点を与えた.この結果,92.5%の画像に対して評点3が与えられた.次に差分画像の画質を結節描出の観点から評価し,3(clearly depicted),2(subtly depicted),1(not depicted) の評点を与えた.この結果,73.8%の画像に対して評点3が与えられ,7.5%の画像に対して評点2が与えられた.また提案手法の実行時間は,2.2GHzのPCでマトリックス寸法512×512の画像1枚当たり平均19.4秒であった.