本稿では,日本の一部上場企業1社の人事データをもちいて,主観評価の決定要因について明らかにする。これまで主観評価に関する先行研究では,評価者が残余利益請求権者の立場にないため恣意的なものとなる可能性や認知バイアスによる評価の歪みなど,そのデメリットが強調されてきた。しかし,本稿では評価者は前年度の成果や昇進などの客観的な基準をもちいて主観評価を行う傾向があり,かつその影響力が十分に高いことを実証的に明らかにする。本稿における分析結果は,日本企業における主観評価が従業員の能力を反映する基準をもちいて評価しているという点において,適切に運営されていることを示唆している。