Medical Mycology Journal
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原著
Aspergillus sydowii による爪真菌症の1例
山田 理子野口 博光榮 仁子杉田 隆比留間 翠比留間 政太郎
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2012 年 53 巻 3 号 p. 205-209

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抄録

Aspergillus sydowii による爪真菌症はまれであり, 診断が難しい. 今回, 本症を分子生物学的手法により診断し得たので報告する. 53歳女性. 既往歴は特にない. 2010年6月, 約4年前に右第 Ⅰ 趾爪の混濁に気づいていたが, 爪の周囲に痒みを生じて来院した. 右第 Ⅰ 趾爪に混濁肥厚があり, 正常爪に占める混濁部の面積は57.3%であった. 直接鏡検で隔壁がある太い菌糸と黒色の胞子を認め, サブローブドウ糖寒天培地25℃の巨大培養で中央赤褐色, 周囲は灰青緑色の集落, スライド培養で分生子頭に放射状に配列した分生子を認め, Aspergillus 属による爪真菌症が考えられた. 血算 ・ 生化学検査に異常はなかった. 爪から直接 DNA を抽出し, リボゾーム RNA 遺伝子の internal transcribed spacer 領域の DNA 塩基配列の決定を行った結果, A. sydowii と同定した. イトラコナゾール (ITCZ) の最小発育阻止濃度 (MIC) は0.25 μg / ml で有用と考えられたため, ITCZ 400mg / 日1週間内服, 3週間休薬を1クールとして, 3クール繰り返すパルス療法を行った. 治療終了6ヵ月後に正常爪に占める混濁部の面積は17.9%に縮小し, 症状は改善したが, 治療終了9ヵ月後, 混濁部の面積は22.3%に拡大し, 同菌が分離 ・ 同定されため, 再度, ITCZパルス療法を3クール行い, 投与5ヵ月後に症状が消失し治癒した.

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© 2012 日本医真菌学会
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