Medical Mycology Journal
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総説
薬剤耐性アスペルギルスの現状
田代 将人泉川 公一
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2016 年 57 巻 3 号 p. J103-J112

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抄録

肺アスペルギルス症は死亡率が高く,重要な深在性真菌症である.しかし,抗アスペルギルス活性をもつポリエン系,アゾール系,キャンディン系のなかでも,経口投与が可能な抗真菌薬はアゾール系に限られ,日本では慢性肺アスペルギルス症の外来治療には,イトラコナゾール (ITCZ),ボリコナゾール (VRCZ) の2種類のアゾール系薬しか使用できない.したがって,アゾール耐性アスペルギルスの出現は臨床的な脅威となる可能性がある.われわれは,日本においてもアゾール耐性のA. fumigatusが臨床現場において存在すること,その耐性機序はアゾール標的分子の変異が原因であること,ITCZ長期投与によりCYP51AのG54変異が誘導され,ITCZ耐性株が産生されることを明らかとした.現在の日本において,複数のアゾールに耐性を示す株は臨床的にも環境においてもまれであり,アスペルギルス症の初期治療において耐性株の存在を考慮する状況ではない.しかし,アゾール耐性株は世界的な拡がりがみられる問題であり,今後も臨床分離株および環境株の継続的調査が必要である.

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© 2016 日本医真菌学会
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