抄録
本研究では、米国環境予測センターで実施された力学的季節予報ハインドキャスト実験の結果を用いて、エルニーニョ・ラニーニャイベント時の500-hPaジオポテンシャル高度場の確率密度関数(PDF)の変化について調べた。初めに、リードタイムが気候学的平均と分散に与える影響を評価するために、2元分散分析を実験結果に適用した。その結果、12-1-2月平均については、リードタイムの違いは統計的に有意な影響を与えないことが示された。しかし、6-7-8月平均については、中国東北部において、リードタイムは気候学的平均に有意な差異を与えていることが示され、この差異は初期土壌水分量によるものと結論付けられる。気候値からのアノマリーに対する、リードタイム影響はリードタイム毎の気候学的平均を用いることによって、除去することができる。この結果を基に、4つのリードタイムの異なる10メンバーアンサンブルを一つの40メンバーアンサンブルに合成した。このことにより、PDFの変化が統計的に有意かどうか調べる検定力を高めることができる。平年時とエルニーニョ・ラニーニャイベント時のPDFを比較するためにノンパラメトリックなKolmogorov-Smirnovテストを実施したところ、多くの領域で、PDFの変化は有意であり、その主要因は平均値の変化によるものであった。また、イベント毎に特有の全球分布が見られた。