Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
台風海洋結合モデルによる台風強度予報の問題点
和田 章義
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58 巻 (2007) p. 103-126

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抄録

   台風ボーガスを組み込んだ台風初期値の元で精巧な数値モデルにより台風強度予報を行う時、数値モデルの比較的粗い水平解像度による予報強度の限界という問題と同様に、台風強度変化傾向の予報にも問題はある。この問題を調査するために、北西太平洋海域における2000年から2002年までの9つの台風の事例について、台風モデルと台風海洋結合モデルにより数値実験を行った。台風海洋結合モデルは局所的な海面水温低下を考慮することにより、台風モデルで予測される積分後半の過発達傾向を改善した。しかしながら台風海洋結合モデルは予報前半で見られる強度変化傾向の予報誤差をほとんど改善しなかった。その予測誤差は3通りの物理過程をそれぞれもつ台風海洋結合モデルによる全ての予測結果で見られ、また予測誤差は台風Bilis(2000)、Wutip(2001)、Phanfone(2002)の事例において異なる特徴をもっていた。Wutip(2001)の事例における、ほぼ同時刻、同強度の条件下での台風の熱的構造は、3通りの物理過程をそれぞれもつ台風海洋結合モデルによる3つの予測結果間で異なっていた。モデル台風の定常性の仮定のもと、3つの物理過程と2つの台風毎に2次元軸対称平均場から最大潜在強度を評価した。コリオリ力によりスケールアナリシスされた等温過程と中心力のスケールアナリシスによる断熱過程による正味エネルギーから最大潜在強度が評価されると仮定することにより、断熱過程での対流有効潜在エネルギーが相対的に大きい場合に台風の急発達は過小評価となることがわかった。台風海洋結合モデルの物理過程を改善することはこの過小評価を改善する1つの改善案となりえる。つまり地表面過程の見直しまたはより精巧な対流境界層スキームの導入は等温過程における有効エネルギーの増加に寄与し、一方で降水過程または積雲対流パラメタリゼーションの見直しは断熱過程の有効エネルギーの減少に寄与する。

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© 2007 気象庁気象研究所
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