Papers in Meteorology and Geophysics
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領域移流拡散モデルによる降下火砕物予測-2011年霧島山(新燃岳)噴火の事例-
新堀 敏基甲斐 玲子林 洋介林 勇太菅井 明長谷川 嘉彦橋本 明弘高木 朗充山本 哲也福井 敬一
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2014 年 65 巻 p. 75-107

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抄録

気象庁の降灰予報で運用している領域移流拡散モデル(JMA-RATM、旧称「火山灰移流拡散モデル」)の改良を行った。(i)初期値の噴煙柱モデルに気象レーダーによる噴煙エコー頂高度の時間変化を利用、(ii)入力値に非静力学モデル(JMA-NHM)である水平格子間隔2 km、鉛直60層(モデルトップ20.2 km)の局地モデル(LFM)を対応、(iii)カニンガム補正した鈴木の落下速度、レインアウト、雨に加え雪・霰によるウォッシュアウトを導入した。従来の火山灰の量のほか、火山礫の径も同時予測の対象とし、これら降下火砕物の密度や形状の予測への影響について検討した。降礫の被害が発生した2011年1月26~27日、2月14日、3月13日、4月18日霧島山(新燃岳)噴火の事例に適用した結果、噴煙エコー頂高度の時間変化の利用とLFMの入力はJMA-RATMによる降灰・降礫予測を改善、カニンガム補正は降灰予測へわずかに効果があった。レインアウトおよびウォッシュアウトは降灰予測への影響が大きいが、観測値が十分でないため今後、キャリブレーションが必要である。また、火砕物の密度や形状の観測値に基づく設定は降礫の到達距離や落下時間の予測への影響が大きいが、一部見逃しがあることから、噴煙柱モデルに風の影響を考慮することが課題である。

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© 2014 気象庁気象研究所
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